ビジネスモデルを変革するには? ハーバード・ビジネス・レビューの論文紹介

コロナ収束がいつになるか分からない日々が続いていますね。

そんな中、ビジネスモデルの変革が急務になっている企業が増えています。

既に、リテイル企業はダメージが甚大でECやデリバリーにシフトしています。

背後にある大きなデジタルシフトと相まり、この流れは暫く続くでしょう。

海外ではコロナの事をChange Agentではなく、Accelerant (加速するもの)と言う識者もいます。

そんな中、ビジネスモデルの変革に関するHBRの記事を読んだので簡単に紹介します。

今回ご紹介する論文は、こちらに含まれています。英語のいい勉強にもなるので、ご興味のある方は是非。

MEMO

HBRの論文はwebでも読めます。但し、無料で読める論文の数には制限があります。

参考 Reinventing Your Business Model - Harvard Business ReviewHBR

ビジネスモデル変革の難しさと実現に向けたステップ

大企業がビジネスモデルの変革に成功したケースは少ないですよね。

日本の大企業は特に苦しんでいる印象です。

本論文では、その理由を以下の二つと整理しています。

  1. ビジネスモデル変革実現に向けた明確なステップが明らかになっていない。
  2. 自社の既存ビジネスの理解が足りていない。

著者は、これら二つの課題を念頭に、ビジネスモデル変革は以下のロードマップに則って検討を進めるのが良いと書いています。

  1. ビジネスモデルについては一旦考えずに、顧客のニーズ (Jobs-to-be-done)を満たす機会を考える。
  2. 自社が1で特定した機会を利益を出しつつ満たすビジネスモデルを整理する。
  3. 2で整理した新たな機会をつかむには、自社の既存のビジネスモデルをどの程度変更する必要があるか把握する。

これを踏まえて、自社のリソースを使うべきか、自社の外に新しい組織を作るべきかを決めます。

MEMO

Jobs-to-be-doneは本論文の著者の一人であるクレイトン・クリステンセンが重視しているコンセプトの一つです。所謂、ドリル(Tool)が欲しいか、穴(Job)が欲しいかの議論で言われている、手段ではなく達成したい目的を理解するアプローチになります。興味がある方はこちらの動画がお勧めです。

MEMO
クレイトン・クリステンセンの代表作であるイノベーションのジレンマでも、本社の既存ビジネスの根底を揺るがす破壊的イノベーションを推進するには自社の外に組織を作る事を勧めています。

ビジネスモデルの定義

そもそもビジネスモデルとはなんでしょう。

ビジネスモデルは以下の互いに関連する四つの要素から成り立っていると整理されています。

  1. 顧客への提供価値(Customer Value Proposition) :「ターゲット顧客」「顧客のJobs-to-be-done」「自社の提供サービス・製品」等
  2. 利益の得方(Profit formula):「売上のモデル」「コスト構造」「ユニットレベルのマージンモデル」「リソースの回転率」等
  3. 主要なリソース(Key resources):「人」「技術・製品」「ツール」「情報」「チェネル」「パートナーシップ」「ブランド」等
  4. 主要なプロセス(Key processes):「デザイン、製品開発、IT、採用のプロセス」「社内のルールや指標(マージン基準、リードタイム等)」「社内の基準(投資基準等)」

日本でビジネスモデルといえば利益の得方が中心になる印象ですが、本論文では、顧客への提供価値から自社のリソースやプロセスまで含まれています

MEMO

顧客への提供価値は、いかに明確にJobs-to-be-doneを定義するかの重要性が説かれています。

特に、新たなビジネスを構築する際に多くに手を出し過ぎて、顧客にとって重要な部分の価値提供がおろそかになるケースに警鐘を鳴らしています。

ビジネスモデルの組み立て方

新たなビジネスモデルを組み立てるには順番があります。

まずは、顧客への提供価値を確立することから始まります。

そして、利益の得方を整理し、実現するリソースとプロセスを構築していきます。

特に、変革の初期ではリソースやプロセスの調整が多く必要になるため、フレキシブルに組み立てることを勧めています。

本論文では、インドでタタ・モーターズが展開したナノを代表例に挙げています。

ナノは、当時車を買う程の所得がなかった一般大衆向けに安価な車を提供して大きな成功を収めました。

これは、顧客の潜在的なニーズを特定した上で、自社の既存の高価格帯向けのビジネスモデルでは利益の得方の確立が難しい事を認識して、工場の効率化やディストリビューションの最適化等で薄利多売の新たなビジネスモデルを作っています

新たなビジネスモデルが必要になる時

著者は、ビジネスモデルの変革は気軽にやるべきではない、と言っています。

特に、P&Gに代表される、既存のビジネスモデルを活用しながら革新的なプロダクトを生み出す事で競争に打ち勝つ事が可能であるケースも多いと言っています。

以下の5つの場合に、新たなビジネスモデルを考える事を推奨しています。

  1. 置き去りになっている大きな市場を開拓できる場合(主に価格が高すぎる、又は商品が複雑すぎて手が出せないセグメント)
  2. 新しいテクノロジーを活かせる場合、又は既存のテクノロジーを活用して新たなマーケットが開拓できる場合
  3. コモディティ化が進んでいる市場で、顧客のJob-to-be-doneの解決に特化することで新たな機会を生み出せる場合
  4. 破壊的イノベーション(特に、廉価で高価なプロダクトを代替していくもの)に対抗する必要がある場合
  5. 競争環境の変化に対応する必要がある場合

上記に該当する場合も、投下するリソースに対してリターンが見込めるかどうか精査することは必要であり、本格的に取り組むかどうかを判断するために以下の点を考える事を推奨しています。

  1. 顧客の要求を、優位性をもって満たすことができるか。
  2. 顧客の要求を満たすビジネスモデルを、前述の4点が有機的に連動する最適な形で組み立てることができるか。
  3. 既存のビジネスラインから妨害されずに新しいビジネスモデル構築のプロセスを組み立てることができるか。
  4. 新しいビジネスモデルは競合に打ち勝つことができるか。

既存のビジネスモデルとの兼ね合い

新しいビジネスモデルは、既存のビジネスモデルを活かす形で実現できる事も多くあるようです。

例えば、既存のビジネスで育てた業界知見が豊富な社員のうち、新規ビジネスに適した人材を抜粋して割り当てる事で、市場から雇うよりも効率良く組織を構築していくことができます。

一方で、既存のビジネスを基にしたKPIや文化は組織に浸透するものなので、新規のビジネスを阻害してしまうケースも多くあるようです。

本論文ではグロス・マージンの40%基準が既存ビジネスで設定されており、新規ビジネスに適さない事が例示されていました。財務上の指標の他にも、プロダクトのクオリティ等のオペレーション上の指標、価格設定の考え方や社員の評価基準等があり、組織の至る所に既存ビジネスを基にした文化がしみこんでいる可能性があるようなので、注意が必要になります。

考察

如何だったでしょうか。

本論文の置づけを考えると、既存ビジネスのイノベーションという事で、大企業の新規事業開発に向けた経営判断に活用することが目的になると思われます。

今回紹介した指標と要素を基に、新規事業開発の意思決定をし、リーン・スタートアップをはじめとしたアジャイルの考え方で試行錯誤を繰り返して実際のビジネスモデルを構築していく形が良さそうです。

日本においては、柔軟に組織を分けたり試行錯誤をしたりするのが難しいケースが多いため、既存のビジネスモデルを活用し辛い場合はトップのコミットメントや強い案件推進者の選出が鍵になりそうです。

少しでもビジネスモデルの変革に向けた検討の一助になる情報があれば幸いです。

コロナの影響を考えるにあたっては、こちらの本も参考になります。
Kindleで移動時間中に読むのがお勧めです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です